2011年御翼12月号その1

「あなたが僕の魂を救った」―ジョン・レノン

 1980年12月8日に射殺されたジョン・レノン(元ビートルズのリーダー格)は1977年、短期間ではあるが、毎日、"Praise the Lord"(主を誉めよ)、"Thank you, Jesus"(イエス様、感謝します)などを連発していたという。彼は、ビリー・グラハムから最も影響を受け、キリストの愛に触れ、歓喜の涙を流し、罪の赦しを祈り、「あなたがわたしの魂の救い主―You Saved My Soul」という歌を作った。これは、彼が東京の大倉ホテルに滞在中、自殺願望から救われた時の歌である。この歌は公式に発表されることなく、封印されてきた。その他、彼は"Talking with Jesus" や"Amen" (主の祈りにメロディーをつけたもの)などを作曲・作詞している。そして、当時、数週間に渡り、息子シーンと共に教会に通った。また、自分の健康と結婚問題のために祈って欲しいと、キリスト教番組に電話している。ジョンは救われた喜びを妻オノ・ヨーコと分かち合おうとした。しかし、ヨーコは、ジョンの変わり様にたいそう不満だった。彼がキリストに従う者になると、オカルトを信じる自分に頼ってくれなくなると知っていたからである。そして、イエスは神の子ではないと説得し、ジョンをオカルト的なものへと引きずり込んで行く。やがて、ジョンは、「イマジン」(1971)で歌われているように、「世界には天国も地獄も無い」という、非聖書的な概念を主張するようになる。そして、占星術、数秘術、超能力などに支配されていった。(The Final Days of John LennonとLennon in Americaより)
 オノ・ヨーコ(小野洋子)は1933(昭和8)年2月、東京の裕福な銀行家の家に生まれた。母方の曽祖父は安田財閥創始者・安田善次郎、祖父が貴族院議員という家柄である。父の仕事に伴い2歳で初めて渡米してから何度か日米を行き来している。ヨーコは幼少期の記憶について、以下のように記している。「五、六歳の頃だったと思う。(中略)… 家庭教師は、バイブルを読んでくれる先生が一人に、外人のピアノ教師がいた。それに私のお付きの人がいて、仏教を教えてくれた」と。日米の往来、戦争、疎開、多くの使用人に囲まれた生活と、極めて独特な環境で育った。そして12歳で終戦を迎え、全ての価値観がひっくり返される。孤独な自己探求の後に見つけた答えは「既成の道徳・価値感に対する本能的な拒否反応」であった。既に聖書に触れていた彼女は、キリスト教への反発をも強めたようである。
 テレビ伝道者オラル・ロバーツ牧師は、1973年、ジョン・レノンから手紙を受け取る(『オラル・ロバーツの伝記』より」。手紙の中で、自分はビートルズへ幻滅を感じ、解散しようとしていたと告白している。更に、オノ・ヨーコとの再婚が、最初の妻との間の息子、ジュリアン・レノンとの関係を悪くしており、ヨーコも前の日本人の夫との間の娘・キョウコを、元夫が連れて行ってしまったことに気が変になりそうだったという。以下はその手紙である。
「ロバーツ先生、私は元ビートルズのジョン・レノンです。…僕にはお金がたくさんあり、ビートルズとして世界中を訪れましたが、人生の問題に直面するのが怖いです。もはや罪悪感から、自分を愛することができません。以下が私の半生です。リバプールに生まれ、幼いころから叔母に育てられました。叔母のことは好きになれず、いつも母が恋しく、不幸な少年時代でした。先生のような父親がいたら、もしかしたら自分はより良い人間になれていたかもしれません。母と自分を捨てた父は、「A Hard Day’s Night」がヒットすると金をせびりにきました。僕は激怒し、薬物の影響もあり、父を殺そうとしたが、ポールが僕を抑えつけたのでした。ポールと二人で書いた歌「Can’t Buy Me Love(お金では愛は買えない)」は本当ですね。僕は幸せが欲しいのです。薬物も使い続けたくありません。キリスト教が自分のために、どんなことをしてくれるのか、教えていただけないでしょうか。キリスト教はまやかしなのでしょうか。イエスは僕を愛することができるのでしょうか。僕はこの地獄から抜け出したいのです」 敬具 ジョン・レノン
 ロバーツ牧師は、4〜5枚の返事を書き、著書を送り、キリスト教の基本を教えた。そして、神が魂を救ってくださるよう希望を持ち続けなさいと激励したという。その4年後、ジョンはキリストによって救われた喜びを得て、You Saved My Soulを書いた。そのデモ録音がYou Tube に投稿されており、現在は聞くことができる。この録音は、1980年11月14日とあり、それが事実ならば、彼が撃たれる3週間前のことである。
 "You Saved My Soul"― John Lennon
  Demo recorded on 14th November 1980.
あなたが僕の魂を救った ジョン・レノン      1980年11月14日デモテープ録音

僕が孤独でおびえていたとき  テレビ伝道者に感化された
東京のホテルの一室で
あなただけがその真の愛で、あの自死から僕を救ってくれた
全てのことゆえに、僕はあなたと共に死にます
僕がアパートの窓から飛び降りようとしたときのことを覚えていますか
いつものニューヨークの町のウェストサイドで
あなただけが、愚かなプライドが原因の、あの自死から僕を救ってくれた
僕の魂を、あなたの真の愛で救ってくださったことを、感謝したいです 

 ジョン・レノンが他のビートルズメンバーと違うところは、名ばかりではあるがクリスチャンとして育てられ、リバプールのセント・ペテロ教会の日曜学校に通っていたということである。ジョンは死ぬ数週間前のインタビューで、「自分の信条は、禅クリスチャン、禅異教徒、禅マルクス主義者、あるいは何でもない」と表現していた。しかしまた、依然として聖書は読んでおり、「イエスのたとえ話のいくつかは、長いこと教会や学校に通った後、ようやく今になって意味を持つようになっている」とも語っていたと、ニューズウィークの記者Barbara Graustarkは言う。
 神を認めない人生に疲れたジョン・レノンが、一時期、キリストに救われたことを喜び、日記に記し、歌にしている。ジョンがキリストを個人的な救い主として受け入れたと記している彼の日記は、彼の死後、一時期世に出回ったが、その後、オノ・ヨーコにより回収されている。そこには、純真な心を持つ者をも、悪の道に引きずり込もうとするこの世的な「悪」(ポネーリア)の力が働いている。"You Saved My Soul" は、オノ・ヨーコによって魂が救われたとする歌だと解釈したがる人もいた。しかし、どのビートルズの歌よりも明るく、突き抜けた感じがあり、安心感のあるこんな曲が作れるのは、キリストによって救われた魂によると確信できる。

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